長野県松本市で「家族信託」や「遺言書」、「任意後見」など生前の相続対策に特化した取組を行うディアパートナー行政書士事務所です。
当事務所が業務提携しているトリニティ・テクノロジー株式会社の運営する「Weeklyメルマガ」コラムを参考に相続対策や事業承継について考えてます。
このブログでよくご紹介させていただいている「家族信託」ですが、「家族信託」は「託す人がいる場合」に活用されます。
「家族信託」という名称から、家族でないとダメとか、家族間の財産管理手法のように思われる方も多いのですが、「中小企業の事業承継」などにも活用されることがあります。(もともと家族信託は「民事信託」の一種です。各種信託の根拠である信託法では「民事信託」と規定されています。)
今回は、家族信託を活用した「事業承継」について考えていきましょう。
「認知症対策としての家族信託」以外の活用方法
このブログでも「認知症対策としての家族信託」を取り上げる機会がほとんどで、あまり他の活用領域をご紹介する機会はありませんでした。
たとえば、「おともだち信託」や「ペット信託」など、認知症対策だけではない「家族信託」の活用法があります。
対象者で考えてみても、「高齢者」、「障がい者・浪費者など」、「おひとりさま(非入籍カップルを含む)」、「資産家・投資家」、「会社経営者」など様々な方が対象者となり得ます。
このように家族信託の活用領域は非常に広く、その中でも大きな可能性を秘めているのが「事業承継」の領域です。
事業承継において家族信託を検討すべきケースは?
まずは「家族信託以外の事業承継の方法」を考えてみましょう。
「事業承継」と一口に言っても様々なパターン、方法がありますが、中でもつぎの4つを検討することは多いのではないかと思われます。
① 株式の贈与・譲渡
・自社株式を後継者に生前に贈与・譲渡する手法です。
② 新事業承継税制を適用しての贈与
・事業承継税制は、株式の継承にかかる重い税負担を軽減し、中小企業の事業承継を促す
ための制度です。
③ 種類株式(拒否権付き株式など)の活用
・種類株式は、権利の内容が異なる2種類以上の株式を発行する場合における各株式をさ
します。
④ M&A
・最近よく聞く「M&A」という言葉。M&Aとは「企業の合併と買収」を意味します。
①~④を行うにあたっての障壁は?
上の①~④を活用できれば、うまく事業承継を行うことが可能になるかもしれませんが、実施するにはそれぞれ、以下のような障壁があります。
① 株式の贈与・譲渡
・事業承継時の株価(※)が高いと、譲渡資金や贈与税などの費用面の問題が生じる。
※)中小企業の株式なので「非上場株式」がほとんどであり、正確には「株式評価額」
ということになります。
② 新事業承継税制を適用しての贈与
・新事業承継税制の適用を維持するための条件が非常に厳しく、ハードルが高い。
③ 種類株式(拒否権付き株式など)の活用
・会社の謄本に種類株式の内容が記載されてしまうことに抵抗感を持つオーナー経営者が
存在する。(種類株式は登記されるため誰でも閲覧が可能)
④ M&A
・不確実性が高く、完了するまで長期間を要してしまう(または実現しない)。
中小企業の経営者は70代〜90代の方の割合が非常に多いと言われています。(中小企業庁『2022年版中小企業白書』では、2020年における経営者の平均年齢は62.5歳)
上記の①〜④の方法による事業承継が難しい、且つ、現経営者に認知症の疑いがある場合や、将来的な現経営者の認知症対策をしたい場合に導入を検討するのが【事業承継×家族信託】、すなわち「家族信託を活用した事業承継」となります。
「家族信託を活用した事業承継」の特徴とは?
会社の株式には次の「2つの権利」があります。
ひとつは「議決権行使に関する権利(共益権)」、二つ目は「利益配当請求権(自益権)」です。本来、株式の所有者(株主)はこの2つの権利をセットで有しています。
ところが、「家族信託」というスキームを導入することで、本来、セットであった「議決権を行使する権利」と「利益配当請求権」を分離することが可能になります。
家族信託を活用するとこの2つの権利はどうなるのか?
株式を信託する(自社株を信託財産にする)と、権利の帰属が以下のように分離します。
〇議決権を行使する権利・・・受託者(多くの場合は後継者)
〇利益配当請求権・・・委託者兼受益者(多くの場合は自社株式所有者)
現在の社長が自社の株式を後継者である次期社長に信託することにより、議決権を行使する権利が次期社長に移り、利益配当請求権(財産権)は現社長に残ることになります。
つまり、「家族信託を活用した事業承継(【事業承継×家族信託】)」を行うことで、議決権を後継者(受託者)に移しつつも、経済的利益は現社長(委託者兼受益者)に残したままにできるわけです。
もし、議決権の移動にいささかの不安を感じているのであれば「停止条件付」の信託契約を結んで、停止条件が解除される状況になるまでは、株主が議決権は保有することも可能です。
「停止条件付」とは、たとえば現社長(委託者兼受益者)が、判断能力低下で「後見相当、補佐相当」になった時から発効するなどというケースが想定されます。(実際にはもっと細かく停止条件を指定します)
「家族信託」は、委託者と受託者の間の契約行為のみで実行可能であり、株式の移転コストや実行後の厳しい制約等もありませんので、他の手法(上記①~④)と比べて実行のハードルも低くなり、比較的取り組みやすいといえます。
また、信託財産を「自社株式」のみとして、他の親族、役員、従業員などに誤解を招かないような工夫をするともできます。
「事業承継のご相談」は「ディアパートナー行政書士事務所」へ
当事務所では、中小企業オーナーの「自社株式の信託」も手掛けています。
「自社株の信託」は、信託締結には「贈与税」は発生せずに「議決権(会社の運営管理)」は後継者に移すことができます。
「自社株の株式評価額が高い」場合には、「生前贈与」や「相続」の際には多額の税発生が見込まれることも多いわけで、後継者が数年かけて「株価を下げる取組み」を行うことも有効になります。
しかし、家族信託は、中小企業オーナーが意思判断能力があるうちでないと信託契約を結ぶことができません。
世の中の動き、とくに経済面では動きの激しさが増している昨今、会社の運営を左右する「会社の議決権の確保」は、会社経営には非常に大事になります。
中小企業オーナーに万が一のことがあった場合にも、会社の運営が問題なくできるような準備は欠かせません。
ディアパートナー行政書士事務所では、「自社株式の信託を活用した事業承継」についてのご相談に対応させていただいておりますので、お気軽にご相談ください。
ディアパートナー行政書士事務所 電話:0263-34-6163
電子メール:info@dp01.co.jp
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